そして、翌朝、よっすぃ〜は戦いへの道へと一歩踏み出した。
私はよっすぃ〜の家族とともに、手術待合でオペが終わるのを待つ。


「ごっちん」


始まってから、2時間くらいたっただろうか。
急に私の名前を呼ぶ声が聞こえて、
私はその声の方向を見た。

「あ…あやっぺ…」

そこにいたのはあやっぺで。

「あのさ、ごっちん。吉澤さんから預かりものがあるんだ」
「よっすぃ〜から?」
「うん」

そう言ってあやっぺはMDウオークマンを差し出した。

「これ、聞いてみて」


PLAYボタンを押す。
流れてきたのはよっすぃの歌声。
私たちが一緒に歌ってきた、娘。やプッチの曲たちを
よっすぃが一人で歌ってるものばかりだった。

「これ…」
「この前、吉澤さんが家に来てね、レコーディングしてくださいって」
「そうなの?」
「ごっちんに、残してやりたいんです。
いらないっていわれるかもしれないけどって」

この前って…
もしかして帰りが遅かった日?

「喉の調子よくなかったみたいだけどさ、
どうしてもって言ってね」

涙が溢れてきた。
ずっと我慢してきたのに
よっすぃがこんなことするから…。


『真希ちゃん、次が最後の曲だよ。
声が出せなくなっても、君のための笑顔は大切にしたいから。
真希、愛してます』

そんなこと言ってて。
こんな言葉、あやっぺや真矢さんの前でどんな顔して言ったんだろうって思ったら
なんか笑っちゃった。

最後の曲ー。
アカペラだった。
♪一人ぼっちで少し  って
掠れた声で歌ってる。
馬鹿よっすぃ〜…。
泣かすんじゃないよ、全く…。
涙が溢れて止まんない私を、あやっぺがずっと頭を撫でててくれた。

「吉澤さんがね、あたしが手術室入ったら渡してくださいって」
「よっすぃ〜…」
「ごっちん、泣くな?」
「うん…」
「泣いたらさ、手術室の中で懸命にがんばってる吉澤さんに悪いっしょ?」
「そうだよね…」

涙は封印しよう。
よっすぃ〜の手術が成功するように願いを込めて。

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