鼻を冷やしながら保健室のベッドに横たわるひとみをじっと見てた。
顔の半分をタオルが覆っているから、その表情はわからないけれど、
ひとみがちらっと横目で私を見た。
「行かなくていの?」
「うん。心配だし」
「負けちゃうよ?」
「保健委員は連れて帰るまでが仕事だし」
むちゃくちゃな理由だけど。
苦手なタイプのひとみだけど、
昔から言うじゃん?三日も一緒にいれば情も湧くってさ。
ってか私、誰に言い訳してるんだろ…。
暫く休んでたひとみが、痛みがましになったのかタオルを外した。
「どう?腫れてる?」
…うそ… まじ?
めちゃくちゃかわいいじゃん…。
ありえないくらいに大きい目に、くっきり二重。
おまけに長いまつげ。
「かわいい…」
思わず口に出して言っちゃった。
「へ?」
「めーっちゃ、かわいい」
「誰が?」
「ひとみ」
「えー、かわいくないよ」
「それって嫌み?鏡見たことないの?」
「あたし、めちゃくちゃ目悪いんだよ。だからメガネかけた自分の顔しかはっきり見たことない」
なるほどねえ。もったいない。
「決めた!」
「何を?」
「ちょうどメガネも壊れたし、コンタクトにする!」
「ええ!怖いよ」
「怖くないってば。私が付いていってあげるから」
かくしてその日の放課後、眼科で処方箋をもらって、私たちはコンタクトを買いに出掛けた。
二人で街中を歩くのに、何度かちらちらと横顔を覗き見る。
やっぱりすごい綺麗。
なのにダサい格好してるなんてもったいなすぎるよ。
コンタクトをはめて、まじまじと鏡を見てるひとみ。
「あたしってメガネ取るとこんな顔だったんだ…」
「そうだよ。かわいいでしょ?」
「うーん、好きじゃない」
「ええ!?」
「だって濃いよ」
「…」
あんたねえ、それって贅沢って言うんだよ?
よし!決めた!!
原石なひとみを、私が磨いてピカピカの宝石にしてやる!
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