その日の夜、仕事から帰って来たママが興奮気味にしゃべりだした。
「オファーが来たのよ」
「え?何が?」
「アメリカのブランドから」
「専属デザイナーにでもなるの?」
「専属モデルよ」
「ひとみ?」
「ええ。是非にって言ってきたわ」
「すごいじゃん、ひとみ」
喜ぶ私とママを尻目にひとみは戸惑い顔だ。
「悪い話じゃないと思うわよ?
家はロスに知り合いがコンドミニアム持ってるから、そこ使えばいいし」
ひとみは一晩考えさせてって言って部屋に戻った。
私が遅れて部屋に帰ると、ひとみは机の前で腕組みをして、考え事をしているようだった。
私は邪魔をしないようにベッドにそーっと入った。
翌朝、ひとみの目は真っ赤だった。
「寝てないの?」
「うん…寝れなくて」
時計を見る。
あと三十分は余裕がありそうだ。
「おいで?」
不思議顔で私の隣に座るひとみを、私は自分の膝に寝かせた。
「ちょっとでいいから寝な?」
そういって頭を撫でてあげると、ひとみは三秒で眠りに落ちた。
時間がきて起こしたとき、ひとみは妙にすっきりした顔をしていた。
「決めたよ」
「え?」
「夜にみんなの前で話すから」
…ひとみ、アメリカにいっちゃうのかな…。
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