一時間、二時間、
時間は経つのにカーテンの中に動きがない。
今日は無理なのかな…。
いや、でももう少し待ってよう。
窓を見上げながら、
ひとみの優しい笑顔を思い出して、そう思った。
タラシだとか、女をコロコロ変えていただとか、
そんな評判はどうでもよかった。
私の前では優しくて、暖かい人なんだもん。それでいいよ。

夕方になり、雨が降って来た。
傘を持ってなかったけど、そんなことは気にならなかった。
だって今はひとみが一番大事。
雨はだんだん強くなってくる。
もう下着までずぶ濡れだよ。
あたりも薄暗くなってきて、だんだん不安が募る。
初夏なはずなのに体ががたがた震えてきた。
熱でも出て来ちゃってるのかな…体が異様に重かった。
耐え切れなくてしゃがみこんで…。


「馬鹿!何やってんだよ!」


愛しい声に顔をあげると、
ひとみがそこにたっていた。
…幻覚?
いいや、この際幻覚でも…。


「ひとみ…」


立ち上がろうとしてフラついた。
さっとひとみが抱き抱えてくれたから、倒れずにすんだ。
ひとみの手にはタオルが握られていて、ばさっと包み込まれた。


「…見てたの?」
「うん…」
「紗耶香さんは?」
「ちゃんと話しつけてきた」



そういいながらひとみは私に腕の傷を見せた。


「!!」
「あたしは真希のところへ戻る!わかってくれないんだったらおまえを殺して自分も死ぬってね」


…この人、馬鹿だ…


「大丈夫なの?」
「うん。深くは切ってないし」
「ばかぁ…」


あまりの直球勝負に涙が出て来た。


「あたし、自分でも驚いたよ、自分の中にこんなあっつい部分があったなんてさ」
「…戻って来てくれるの?」
「真希が許してくれるなら」


安心したら、目の前が真っ暗になった。
気がついたら、私は懐かしい我が家の自分のベッドに寝ていた。


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