「どこ行ってたの?」


病室を開けると今までに見たことがないような不安顔のひとみ。
ちょっぴり涙目で…不安だったのかな。


「着替え取りに行ってたんだよ」


安心させるためにそっと髪を撫でる。


「…真希?」


ひとみがいぶかしげに私を見つめる。
やば…ばれたかな…。


「泣いてたの?」
「え?あ…うん…」
「どうした?」


優しい目でそう聞かれて、我慢してたものが溢れ出した。
心配かけちゃいけない、
だから泣いちゃいけない、
そう思うのに、涙腺が言う事を聞かない。


「…ごめん…言えない…」
「どうして?」


そんな上目遣いでみないでよ…。
ひとみが天然でタラシっていうの、わかった気がする。


「もしかして…」


急に険しい顔になるひとみ。


「紗耶香か?」


鋭いね…。隠し事は無理だ、そう思ったから私は全てを話した。


「くそっ!」


ひとみが点滴をブチ抜いた。
白い腕から赤い血が吹き出す。


「ひとみ、血…」
「かまわない」


ひとみはそばにあったタオルを腕にきつく巻きつけた。


「紗耶香のとこ行ってくる」
「ちょっと待って…」
「あたしがあいつのとこ戻ればすむんだ」
「やだよ…」
「もうこれ以上真希に迷惑かけたくないんだよ」


そう言うとひとみは病室を飛び出した。


「待って!」


追い掛けないと二度と会えない気がして、あたしは必死で後を追った。


だけど、結局見失って、私は病院に戻った。
看護士さんに頭を下げて、
パパとママに謝って…
帰ってくるかもしれないからって病室に泊まらせてもらった。
だけど、ひとみは帰ってこなかった。


「ねえパパ、ひとみの前の高校教えて?」


こっちからのりこんでやる。
ひとみを取り返しに行くんだ。
誰にも渡したくないから。


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