「ねえ」
「ん?」
「何怒ってんの?」
「怒ってないよ?」
「嘘だ。機嫌悪いじゃん」
「悪くないってば」


なんであたしが後藤さんに怒らないといけないんだ?
ん?
誰か前にもあったと思ったからか?
やきもち?
うそぉ、ありえねえ。
彼女いるってのに、ねぇ。

でも確かに後藤さんのことで気分がむしゃくしゃしてることは事実のようだ。


「本当に怒ってない?」
「怒ってないって言ってんじゃん」

ああ…もう…生徒に何、仲間うちみたいな話し方してるんだろう…。


「眠たくなった。シャワー借りていい?」


話題をかえてみた。


「うん、どうぞ。部屋にあるから」


…シャワーまでついてんのかい。

シャワー浴びて、後藤さんの服貸してもらって。
あたしの方が背があるからへそが見えて笑った。


「明日学校だからそろそろ寝よっか」
「そうだね」


後藤さんがベッドに入る。


「…あたし、どこで寝ればいい?」


そんなあたしの問いに、後藤さんは自分の横を指差す。


「…へ?」
「イヤだった?」


あたしは慌ててぶんぶんと横に首を振る。


「いやじゃないけど…いいの?」


えーい、もう、あたしは観念して後藤さんの隣に入った。


「おやすみなさい」


30センチあるかないかの距離で言われて、意識するなって方が無理だっちゅうのねえ。
寝ている間も、寝返りをうてば必然的に身体が触れるわけで、
そのたびにどきどきしたりして。
でも、不思議なもんで何回かそんなことを繰り返しているうちに、
後藤さんのぬくもりと匂いが気持ちよくて、いつのまにか眠りに落ちていた。


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