「どうかした?」
「いえ…安倍さんは優しいなって思って…」
「褒めても何も出ないわよ?」
そう言って微笑む安倍さんを抱きしめたいって思った。
「あたしの好きな人が、安倍さんならよかったのに」
「何言ってるんだベ」
「安倍さん…」
あたしは安倍さんを抱きしめた。
「ちょ…よっちゃん?」
「お願いです。安倍さんをあたしに下さい」
あたしは有無を言わせる暇も与えずに、安倍さんの唇を奪った。
深く長いキスを交わして。
そのまま半ば強引に、あたしは安倍さんを抱いた。
行為が終わったあと、安倍さんは泣いていた。
「ごめんなさい…」
「謝るくらいなら最初からしないで」
「…」
「なっちはよっちゃんのこと好きだから、イヤじゃなかったよ?
でも、愛情のない行為は悲しいよ?」
「そんな…吉澤は安倍さんを愛してます」
あながち嘘じゃなかった。
ごっちんのことがあってから、ずっと安倍さんがそばにいてくれるの心強かった。
「ごっつぁんを捨てられるの?」
「え?」
「よっちゃんのしてることってそういうことだよ?」
「…」
そんなことをいわれながらも、安倍さんはこの日あたしを泊めてくれた。
さすがに夜はなにもしなかったけど、
あたしは安倍さんを抱きしめて寝たんだ。
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