壁にもたれて、ただ時間が過ぎるのを待つ。
一生分の咳が今日出てるんじゃないかってくらいに出て、正直、何回か吐いた。
「よっすぃ〜」
あたしを呼ぶ声に顔をあげた。
咳の所以で滲む視界にぼんやり浮かぶごっちんのシルエット。
「…真希ちゃん?」
「よっすぃ〜、かなりぼろぼろだねえ」
「うん…何回も吐いた。頭も痛い…」
「そっか…心細かったでしょう?」
そういいながらごっちんが頭を撫でてくれる。
「すごい熱…」
結局あたしはこのあとごっちんに病院に連れて行かれた。
「ばかよっすぃ〜」
「だって…」
「ここまで来るのに泣きそうだったんだから」
「ごめんね」
「あげく酷い風邪ひいて…。ほんっとばかよっすぃ〜だ」
「元のごっちんだ…」
「え?」
「ずっとね、あたしが馬鹿なことしたらさ、そういいながら怒ってくれてたんだよ?」
怒られるのが嬉しいなんて初めてだ。
「じゃあもっとおこってあげようか?」
ごっちんがニヤッと笑う。
「え…」
「うそだよ〜」
あほっぽいノリが懐かしい。
今なら…今なら言える気がする。
「ねえ真希ちゃん」
「ん?」
「あたしを抱いて?」
「…え?」
「それであたしのこと思い出さないんだったら諦めるから」
「だってそれは…」
わかるよ。愛のない相手は抱けないっていうんでしょ?
でもそれ言われちゃうと立ち直れなくなれそうだから無視して。
ならあたしからやってあげる。
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