<3>

 

彼女のマンションに着いて、彼女が料理してくれるのをボーっと見てた。
しばらくしてテーブルの上に所狭しと並べられた料理は
どれもこれもめっちゃ美味そうだった。

「美味そ…」
「こう見えても、料理は得意なんだぁ」

そういってやわらかい笑顔を浮かべる彼女。
こっちまで心がやわっこくなる。
彼女の笑顔にはそんな魅力がある。
テレビでももっと笑えばいいのに なんて思った。

「…これ、全部食っていいの?」
「うん、どうぞ?」
「いただきます!」

久しぶりに食べる作り立てほやほやの料理。
しかもその味はその辺の下手な店より全然おいしくて
あたしはおなかがすいてることも手伝ってめっちゃがっついてしまった。
なもんで、お約束的展開で喉に詰まった。

「んぐっ…けほっ」
「ちょっと、大丈夫?」
彼女が背中をとんとんってしてくれた。

「そんなあわてなくても…」
「うん…ごめん、ありがと…」

お礼を言いながら彼女を見たら、
必然的に至近距離で目が合った。
なんか恥ずかしくて、二人して目をそらしてしまった。
何やってるんだか…うちら、女同士だし。

「でもさ、おいしそうに食べるね」
「え? あー、オイラ?」
「うん。見てて気持ちいい」
「腹減ってるからね」
「あのさ」
「なに?」
「名前」
「ん?」
「名前、なんていうの?」
「吉澤」
「吉澤くん? 下の名前は?」
「吉澤ひと…む」
「ひとむ? 変わった名前だねえ」
「うん。人に夢と書いてひとむなんだ」

我ながら口からでまかせにしたらうまい嘘だよね。

「人に夢かあ。いい名前だね」
「ありがと。でも名前負けだよ」
「人に夢与えるんだよ?」
「オイラもそれ思ってさ、人に夢与える商売しようなんて意気込んだけどだめ」
「そうなの? 何やってたの?」
「ストリートミュージシャン」
「歌ってるの?」
「うん。つい最近までね」
「一緒だぁ」
「なにが?」
「私も歌う仕事してるんだよ」
「ああ、そうだね」
「私のこと、知ってる?」
「うん。後藤真希ちゃんでしょ?」
「歌とか聴いてくれたことある?」
「あるよ」

だって弟がファンだし。
シングルもアルバムも全部家にあるよ。

「そっかあ。私の歌ってどう?」
「ん? いい声してるなって思うよ」

これは正直な感想。
あたしは男っぽい声してるから、凄くうらやましかったりもするわけで。




楽しい時間は瞬く間に過ぎて、
いい加減帰らないとな…。

「そろそろ帰らなきゃ…」
「帰るの?」
「うん、帰らなきゃやばいでしょ…」
「でも吉澤くん、さっき帰る家ないって…」
「うん。ないよ。その辺で寒さ凌げるとこ見つける」
「そんな、風邪引いちゃう…」
「いや、引くならもう引いてるでしょ。今日で野宿も三日目だし」
「お風呂は?」
「ううん」
「じゃあ入っていきなよ」
「でも…」
「お願い…帰らないで…」

そういって腕をつかまれた。
え…なんなんだ?
今、帰らないでって言った?

「…後藤…さん?」

なんだかわかんないけど、
なんか寂しそうな顔して「帰らないで」なんて言われたら
帰れるわけないじゃん…。
ってか、あたしは男かっちゅうの…。

つづく

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