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ああ、腹減った…。
もうここ二日ほど、水以外口にしてない。
布団の上でも寝てないや…。
いい加減、足もふらついてきたよ、情けねえ…
 
あたしは当てもなくさまよい歩いていたのをやめて
自販機にもたれて座り込む。
前を歩いているやつらが、汚いものを見るような目で通っていく。
…そんな目で見るなよ。
あたしだって好きでやってるわけじゃないんだ。
だんだん寒くなってきて、
ああ、このまま眠ったら楽になれるのかなあ なんて…。
19年か…短い人生だったな とか考えて。

「あの…」

そんなときに、不意に声をかけられる。

「自動販売機、使いたいんだけど」
「あ…ごめんなさい」

あたしは座ったまま、自販機の横に移動する。
ガタンと販売機から缶の落ちる音が響く。
次の瞬間、あたしの頬に暖かい感触が…。

「!!!」
「寒そうだったから…。これ、どうぞ?」

さっき自判機を使いたいって言った女の子が、
あたしの前に缶を差し出してきた。
あたしは初めて顔を上げてその子を見た。

…後藤真希じゃん。
あたしの目の前で、あたしにコーヒーを差し出したその子は
最近人気のアイドル、後藤真希だった。
めっちゃかわいい…
あたしはボーっと見入ってしまった。

「これ、もらって?」
「あ…うん…ありがと…」

手を出してコーヒーをもらう。
あたしは座ったままコーヒーを開けて…。
そしたら彼女がしゃがみこんで、あたしの目線に降りてきた。

「誰か待ってるの?」
「ううん」
「かえんないの?」
「帰る家ないから」
「…そうなの?」
「うん、詐欺られて一文無し」

自虐的に笑いを浮かべると、彼女は少し悲しそうな顔をした。
ってか…満ち足りた人気アイドルに何がわかるって言うんだ?

「いつからこうしてるの?」
「…関係ないじゃん」
「…ごめんなさい」

あたしがそっけない態度を取ったから、気まずいムードが流れる。
そんな空気を打ち破ったのは、あたしの腹の虫だった。
かっこわり…。

「おなかすいてるの?」

やわらかい笑顔で彼女が聞いてきた。

「情けないけど…正解」
「何か食べよ?」
「金ないし」
「それくらい出すよ。ね、行こ?」

あたしの前に手を出す彼女。
背に腹は変えられない…。
あたしはその手につかまった。
とても暖かかった。

 

つづく

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